真昼の情事/官能小説

  賄い付き下宿

                        蛭野譲二

   16.詰問


  
 「テディーハウス」に着くと、早速水漏れの起きた部屋を訪ねた。

 そこは、一階の部屋で南雲麻美という女の子が一人で住んでいた。

 あの例の変なヤツが越していってから、このアパートの住人は全て女の人だけになってたんだ。

 俺がチャイムを鳴らすと直ぐに彼女が出てきて、中に招き入れてくれた。

 後で聞いた話だが、麻美はこの年学校を卒業してOLになったばかりだ。

 玄関口に立つその子は、まあ、美系の部類で、綾さんより少し背が低いくらいだが、チビというほどでもなく、中肉中背ってところだろうか。ただ、プリーツのミニスカートを穿いた脚は、以外にスラッとしていて、背丈の割には、脚が長い方だったと思った。

 しかし、麻美のことをはっきりと印象に残したのは、やはり胸だった。

 ほとんどスケスケのブラウスの下には、大き目のバストが揺れていた。

 もちろん綾さんのような並外れた爆乳ってわけじゃないが、充分巨乳で通るバストだった。推定Eカップっていうところだろうか。


 「あのー、大家さんから電話で聞いていると思いますけど、僕はプロじゃないんで、やっぱり手に負えないようだったら、来週に専門の人に来てもらうことになります。もちろんできる限りの応急処置はしますけれど」。

 一応、過度の期待をさせないように、そう言ったんだ。

 だが、ダイニングキッチンを見て、困ってる具合を目の当たりにしたんだ。

 流し台の前の床はベチョベチョで、おそらく流しの下に仕舞っていたであろう鍋類が付近に並べられていた。

 これを見て、リキ入れて取り掛かったのは事実だ。

 水漏れの原因は直ぐに分かった。流し下の水道管の継ぎ手が緩んでたんだ。

 そのままナットを締め直せばいいくらいだったが、一応継ぎ手をはずしてみた。

 パッキンは多少くたびれてる感じではあったが、目に見えて傷んでたわけじゃない。ただ、たまたま持って来ていたのとサイズも同じだったんで念のため交換することにした。

 ついでに蛇口の固定具合もチェックしようと思ったが、手の届きにくいところだったんで、仰向けにならないと無理だった。

 俺は、寝っ転がるのに必要な所を雑巾で拭き始めた。

 「あっ、そのくらいの事だったら、私やります」。

 麻美は、サッと雑巾を奪い床や流し台の中を改めて拭き始めた。

 手持ち無沙汰になった俺は、見るとは無しに彼女を見ていた。

 しゃがんだ姿勢のせいで、スカートが上がりほとんどパンツが見えそうだった。

 このときは、覗こうとしてるのを感づかれちゃまずいとも思い、深追いをしなかった。

 いざ、流し台の下に頭を突っ込み、蛇口の固定をチェックしたら、やっぱり多少のガタツキがあった。

 「どうですか?直りそうですか?」。

 蛇口の付け根を締め終わったころ、麻美が顔を覗き込ますように訊いてきた。

 「あっ、大丈夫です。もう少しで直ります」。

 俺が答えたとき、流しの前にしゃがみ込んでいる彼女のスカートがずり上がっていた。膝も開き気味で、縁にレースの付いたピンクのパンティーが丸見えになっていた。

 瞬間「おっ、やったー」と心の中で思ったのは確かだ。

 普段の俺だったら喜んで仰け反り、頭でも打っていたかもしれない。

 だが、小一時間前に綾さんのノーパンの股間を目撃していた俺は、すぐ冷静になり、パンティーを穿いているのと穿いてない場合での見え方の違いを頭の中で比較していた。

 程なく修理は終わり、笑顔を取り戻した麻美は、何度も礼を言い、俺を玄関先まで見送ってくれた。


 無事修理を終え下宿に戻ると、綾さんは一階で料理を作っていた。

 「バッチリ直りましたよ」。

 「ご苦労様。実家から戻ってきたばっかりなのに、無理言って御免なさいね。今、夕飯作ってるから、その間にお風呂に入ってきて。沸かしておいたから」。

 一階の風呂を使わしてもらうのは、この日が初めてだった。

 風呂場は思っていたよりも広く、清潔な感じだった。俺でも伸び伸びと入れる湯舟は、どちらかというと洋風な感じだったが、沸かし湯もできる構造だ。

 暫く湯舟に浸かっていると混雑した列車やお助け修理の疲れも吹き飛ぶようだった。

 スッキリした気分で風呂を揚がった。

 だが、脱衣所で何時ぞやの籐の籠を目にしてしまい、またスケベ心が湧いてきたんだ。

 一応、居間の様子をうかがい、覗かしてもらうことにした。

 籠の中に入っていた下着類は、ブラジャーが二枚。たったそれだけだった。

 初めて覗いたとき、一枚だけ入っていたパンティーは影も形も無い。

 もう間違えようが無かった。「て、ことは…?」と、考え、一人ニヤけていた。

 脱衣所を出るときには、上は裸のままだったが下にはパンツもズボンも穿いておいた。

 まだ汗がどんどん出てるんで、本当はパンツ一丁くらいで居たかったが、そこは下宿人として控えめにしておいた。

 肩にタオルをかけリビングに戻ると、綾さんがビールを注いだグラスを渡してくれた。

 てっきり冷やしたミルクでも注がれると思っていたんだが、そうじゃなかった。

 でも、この風呂揚がりのビールは、旨かった。

 この後は、帰省前のように、二人で楽しく談笑しながら夕飯をご馳走になったんだ。

 ただ、酒はビール一缶だけで、この前の「立ち退き祝いパーティー」のときのようには薦めてくれなかった。まあ、このとき俺は二十歳前だったわけだから、大家の立場からすれば、その方が当たり前かもしれない。

 ビールの後は、もちろん目の前で搾ってくれた綾さんの母乳をたらふく飲んだ。


 俺は既にTシャツをかぶり、時間は十時近くなっていたと思う。

 綾さんも、ブラウスのボタンをはずしっ放しだったが、オッパイはブラジャーに仕舞われていた。

 話が途切れたところで、俺はちょっとした賭けに打って出たんだ。

 「綾さん。一つ訊いてみたかった事があるんですけど」。

 「えっ何?。いいわよ」。

 「何時も穿いてないんですか?」。

 「えっ!何のこと?」。

 口では惚けていたが、見る見る顔が強張ったんで、質問の意味は十二分に解っていたはずだ。

 「何で穿いてないんですか?」。

 駄目押しすると、綾さんは俯いて暫く黙ってしまった。

 「知ってたの?」。

 間をおいて、ボソッと言葉が返ってきた。

 「今日、道具箱を出してきたとき、見えちゃったんです」。

 「そうなのー」。

 また、沈黙があった。そして答え始めた。

 「穿くの嫌いなの…。私、どちらかっていうと暑がりの方なんだけど…、それより皮膚が弱いの」。

 綾さんは、しどろもどろで喋りながら答えを模索してるようだった。

 「特にウエストのところにゴムが当たってるのってダメなの。肌が負けてるのか、締めつけられてるのが悪いのか分からないけど、長いことゴムが当たってると、かぶれちゃうの。だから、できるだけ避けてるの。下着だけじゃなくて、パンストも同じ」。

 このときの悲痛な感じは、予想以上だった。

 「ちょっとかわいそうなこと、しちゃったな」とも思ったが、後の祭りだ。

 だが、一旦喋り始めた綾さんは、捲くし立てるように告白し続けた。

 「私ね、子供がお腹に居たときは別だったけど、それ以外は高校のころからずっと、家の中では穿かないようにしてたの。結婚してるときは、旦那の前じゃ貞淑な妻を装うために着けてたけど、そうじゃないときは穿いたこと無いの。普段も仕事に行くときと生理のときは、たいてい穿いてたわ。でも、ここに戻ってきてからは、町内に居ることがほとんどだから身に着ける必要が無くなったの。ショーツ穿くのは、電車に乗って何処か行くときくらい。まだ母乳が出てるせいかもしれないけど、産後ずいぶん生理も軽くなったから、今は期間中でも穿かずに過ごせるの。解った?」。

 最後は少し、ヤケ気味の口調だった。

 吐き出すものを吐き出しきると、綾さんは、また沈黙した。

 そして、少し小さな声でぽつんと言ったんだ。

 「いいわ。この前からのお礼もあるから、してあげる」。

 この言葉を聞いて、俺は正に飛び上がらんほどに喜んだ。もちろん、必死で顔に笑いが出ないようにしてたんだが。


 「これからお風呂入ってくるから、駿くんは、二階の部屋で待ってて」。

 「はっ、はい」。

 こんなときの気の利いた答え方なんてわからなかった。でも「ありがとうございます」とか「お世話になります」なんて間の抜けた返事は、どうにか言わないで済んだ。

 俺が立ち上がり、部屋から出ようとすると、綾さんが呼び止めた。

 「駿くん、これ、今日の仕事の分」。

 綾さんは、五千円札を差し出していた。

 あんな修理くらいでお金をくれるなんて思ってもみなかったから、一度は断ったんだ。

 「工事屋さんを呼べば、それだけで一万円は、しちゃうんだから。ね、受け取って」。

 綾さんは、少し強行に俺にお金を押し付けた。

 「代金を身体で払う形になるのを避ける」なんていうのは、大人になった今思えば当たり前のことだが、当時はピンと来なかった。ただ、押し切られるように金を受け取ったんだ。



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