真昼の情事/官能小説

  賄い付き下宿

                        蛭野譲二

   2.魅惑の巨乳美人


  
 引っ越しの当日。

 従兄弟のバンで、荷物を運んできた。

 お袋も来ると言っていたんだが、これはいい迷惑だ。

 「その日のうちに片付くわけじゃないし、寝るとこなんかないよ」とか言って、何とかこっちに来るのを阻止した。

 下宿屋に着くと、横付けしたバンに従兄弟を待たせて、まずは、大家さんに挨拶しに行った。

 「割と早く来れたのね。お母様もご一緒?」。

 「いえ、従兄弟が運転してくれるんで、男二人です」。

 「じゃあ、運び込むのは、お手伝いしなくても大丈夫ね。何か足りないものがあったら言ってね。お店の場所、教えるわ。それに、前の学生さんが残していった物とかもあるから、使えそうなのもあるかもしれないわ」。

 大家さんが明るい笑顔で親切に応対してくれたので、離婚、母親の死と不幸が続いたとは思えない感じだった。


 学生の引っ越しなんで、運び込みはすぐに終わった。

 とりあえず昼飯でも食って、と思ったんだが、従兄弟は「車、長いこと置いとけないから。それに用事がある」とかで、さっさと帰っちまった。

 「ちゃんと食事くらい奢るのよ」とお袋から預かった金があったんだが、従兄弟は、ガソリン代も受け取らず仕舞いだった。

 まあ、ベッドや冷蔵庫なんかの大物の位置決めまでは手伝ってくれたんで、後はぼちぼち片付ければいいか。

 そんな事を思っていると、部屋のドアがノックされた。

 「もし、お昼まだだったら、今からすぐ作るけど、食べます?。あら、従兄弟さんは?」。

 顔を覗かせたのは大家さんだった。

 「もう帰っちゃったんですよ」。

 「あら、それは残念ね。で、中津川さんは、どうします?」。

 ここの下宿の賄いは、朝夕の二食って言うことになっていた。「これは、新入居のサービスだろう」くらいに思った俺は、深く考えもせずお願いすることにした。


 「出来たわよ。食堂へどうぞ」。

 二、三十分も経っただろうか。大家さんから声がかかった。

 サンダルを突っかけて食堂に回りこむと、テーブルには、二人分の食事が並べられていた。

 てっきり定食屋のように、俺の分だけの食事が出されてると思い込んでいた俺には意外だった。

 このとき大家さんは、手でも洗っているようで、流しに向かい、俺に背を向けていた。

 スカートは膝下までの少しフレアになったもので、背中でクロスになったエプロンをつけていた。

 この後姿を見て、俺はちょっと「おっ」と思ったんだ。彼女の体型は、決してデブではなくウエストなんかそれなりに締まってる感じだった。ただし、ヒップはしっかりとボリュームがあり、若い子のように華奢な感じじゃなかった。

 「一人分だけ造るのって、かえって難しいから、二人分造ちゃった。私もまだ食べてないから、ご一緒させてね」。

 振り向いた大家さんがエプロンをはずしながら話してきた。メガネは掛けていない。

 「あっ、どうぞ」。

 どっちが「どうぞ」なのか分かんないようなおかしな返事だったが、高校を出たての俺はそんなことくらいしか言えなかった。

 それよりもメガネを掛けていない大家さんの顔は、驚くほど綺麗だった。見れば、顎も二重顎などではなく、首も長いし、何より肌の色が抜けるように白い。

 そして、エプロンを取り去ったとき、俺はある種衝撃を受けた。

 彼女は、青っぽい少し厚手の生地のブラウスを着ていた。ブラウスは、ドーンと前に張り出していたんだが、それは太っているからなんかじゃなかった。

 エプロンを置くため横を向いたとき、はっきり判ったんだ。

 スカートのベルトで絞られたウエストはキュッと細くなっている。

 その上の胸だけが、大きく迫り出してたんだ。そう、彼女は、それまでの俺が見たこともないような巨乳だった。

 今までは、ダブダブのカーディガンを羽織ったりしていて気が付かなかっただけなんだ。

 真横から見た彼女の胸は、ウエストより二十センチくらいは出っ張っているように見えた。

 そうと判ると、俺は急にどぎまぎしてきた。

 そのちょっと前までは、稀にしか会うことのない親戚の叔母さんとサシで飯を食うはめになったくらいに思っていたんだが、「美人・巨乳」という事実を知ってから、急に心臓が高鳴った。

 「さあ、どうぞ」。

 そう言われて、はっと我に返ったほどだった。

 俺は、あんまり目を合わさないようにして、ともかく出された飯を食った。

 けっこう美味しかったのは覚えているが、どんな料理だったかは、まったく記憶がない。

 ただ、そのときは顔を上げると、胸ばかりに目が行ってしまうのが怖くて、猛烈に食べてたと思う。

 「流石、若い人は良く食べるわね」。

 「いえ、お腹ペコペコだったし、大家さんの料理とっても美味しいから」。

 「学生さんにたくさん食べてもらうのは、出す方としても嬉しいの。もう一人学生さんが入ってるけど、彼の方はちょっと…」。

 言いかけて大家さんは、一旦口を噤んだ。きっと人の悪口になるんで言うのをやめたんだろう。

 食後にコーヒーまで出してくれた。

 「大家さんのいれたコーヒーは、とっても美味しいですね」。

 現に美味しかったんだが、ちょっとヨイショも兼ねてそんなことを言ったと思う。

 「あ、あの大家さんて、呼ばれるのはちょっと…、ね。まだこの下宿継いで間がないし…。そうだ!名前で呼んでくれないかしら。『アヤ』って言うの。糸偏の『綾』ね。苗字で呼ばれるのもちょっと変な気がするから」。

 離婚したばかりだから、旧姓で呼ばれるのが照れくさかったのかもしれない。それに「熊田」じゃ女心としていやだったのかもしれない。

 ともかく、この日から大家さんを「綾さん」と呼ぶことになった。

 「中津川さんは、駿也くんて言うんだっけ。駿くんって呼んでいいかしら」。

 何でそんなことを言い出したのかは、そのときは知るはずもなかった。みんなからは、いつも「シュン」て呼ばれてたし、「中津川」てのも言いにくいのは承知していたから、そのことに何の抵抗もなかった。

 結局、綾さんとの始めての会食は、それだけのことで終わった。ただし、以降、彼女の胸がいつも気になるようになっていたのだが。



官能小説小説の目次ページへ  次頁前のページへ  次頁次のページへ


Copyright 2001 Jouji Hiruno
動画 アダルト動画 ライブチャット