真昼の情事/官能小説


  食物循環

                        蛭野譲二

   12.冷えたミルク


  
 健二にベビーベッドなどの解体を頼んだ後、枝美子は風呂場を掃除していた。

 ほこりっぽい仕事をしてもらった健二に風呂に入ってもらおうと思ったからである。

 浴室内の目立つ汚れを落として、浴槽に水を張っていた。

 壁面の鏡にはしゃがみ込んだ枝美子自身が映っている。

 鏡の真正面に向き直ると、視線を下げる。少し開きぎみになった両スネの間に女の亀裂が見えていた。

 枝美子は、右手の中指をそこに押し当ててみた。少し湿った感触である。

 指先を少し中に入れてみる。ここ二ヵ月間味わっていなかったあの感覚が甦る。

 指をもっと奥に入れようかとも思ったが、同じ屋根の下に健二が居ることを思い出して、辛うじてその欲求を押しとどめた。

 そのまま立ち上がろうとして腰に力を入れたとき尿意を覚えた。

 枝美子は一人微笑すると、再び腰を落とし、その場にオシッコをしてしまっていた。

 蛇口から出る水の音で健二に気付かれる心配はなかったが、後ろめたさも絡んで久々にゾクゾクする気持ちを感じることができた。


 健二が風呂に入っている間に、枝美子は夕食の支度をしていた。

 外へ出掛けて食事でもしようかとも思ったが、健二が枝美子の手料理を希望したため、家で夕食を取ることにしたのだった。

 あらかたの食事の用意が終わり、冷蔵庫から飲み物を出そうとした時、枝美子の頭の中にまたちょっとした悪戯心が芽生えた。

 冷蔵庫から氷を取り出すとゴブレットに入れ、今し方搾り出したばかりのミルクを注ぎ込んでおいた。

 風呂から揚がった健二がダイニングルームに入って来ると、枝美子は「はい、冷たいものをどうぞ」と言って、ゴブレットを差し出した。

 健二は、ゴブレットの中の白濁した液体を見る。枝美子の胸の辺りをちらりと見て、躊躇したような顔をする。

 「冗談きついッスよ」。

 「だって、美味しいんでしょ。それに余っても捨てるだけだから、飲んでくれると助かるの」。

 枝美子の追い討ちに健二は、もう一度ゴブレットを眺めると、覚悟したようにミルクを飲み始めた。

 氷で冷やされていたためか、風呂揚がりの健二には思ったよりすきっりと飲み干せた。

 枝美子はゴブレットに残りのミルクを継ぎ足すと、健二を席に着かせ夕食を取り始めることにした。

 幸い食事中は妙な雰囲気になることも無く、明るく話題が弾んだ。

 ただ、ちらちらと健二の視線が胸にくる度に、乳房が火照るのを感じていた。

 食事が終わりかけた頃、気になっていたことを聞いてみた。

 「健二くんは、彼女居るの?」。

 「男子校だから、そんなチャンス無いッスよ」。

 健二は少しはにかんだように答えた。

 枝美子はその答えを聞くと、何故かほっとしたような気分になった。

 その時「お替り、貰えますか?」と健二が例のゴブレットを差し出してきた。

 「あら、御免なさい、全部飲んじゃったみたい」。

 そう言いかけて思い直し、咄嗟に答えた。

 「あ、もう出ると思うわ。ちょっと待ってね」。

 意味が解らず枝美子を見ていた健二は、枝美子の次の動作を見て、言葉を無くしていた。

 枝美子がブラウスのボタンをはずし始めていたのである。

 ボタンを四つはずし終わると枝美子は、ブラウスの前を開き、ブラジャーに包まれた豊かな乳房を露にした。

 そして左の乳房を持ち上げるようにして剥き出しにする。

 健二は、その様子を瞬きもせずに見詰めていた。

 大人の女のオッパイをこんな間近で見るのはもちろん初めてだった。

 しかも、その大きさは今までにヌード・グラビアなどで見たどの女達よりも大きく、瑞々しく張り切っていた。

 枝美子は、ゴブレットを手に取ると乳房の下にあてがい、ミルクを搾り始めていた。

 二時間程前に搾ったばかりなのに、勢いよくミルクがほとばしる。

 「今日に限って妙にミルクの量が多いわ。それよりも、なんてはしたない女なんだろう。目の前に男の子が居るのに、オッパイを曝け出すなんて」。

 枝美子は自問自答していた。

 ミルクを搾るという必然的な理由が有るにしろ、何も健二の目の前で搾る必要があったのだろうか。

 しかし、この様な状況になって、今更恥かしがって隠すわけにも行かない。

 枝美子は、事務的な顔を装いミルクを搾り続けた。

 ゴブレット一杯にミルクを搾り終わると、「このままじゃ生温かいわね」と言って、冷蔵庫から氷を取り出し、何喰わぬ顔で健二にミルクを差し出した。

 しかし、枝美子自身その時、女の性を意識せざるを得なかった。

 椅子から立ち上がった瞬間に、太腿に温かい液体が垂れ出しているのを感じたからである。

 健二は、差し出されたミルクを飲んでいたが、その後、言葉数は減っていた。


 枝美子は、健二を玄関まで送り出すと「明日も手伝いに来てくれる?」と声をかけた。

 靴を履きかけた健二は「はい」とは言ったものの、後ろめたさもあってか少々気乗りの無い返事をした。

 枝美子は、すかさず靴べらを手に取り、しゃがみ込むようにして、健二に差し出した。

 靴べらを受け取ろうとした健二の視線が、少し立てられた枝美子の膝の間に向けられる。

 それを見取った枝美子は「じゃあ、お願いね」と言って微笑んだ。

 「十時ごろ来ますから、また明日」。

 健二も慌てて笑みをつくり挨拶をした。

 帰宅の道すがら健二は、今日の出来事に考えを巡らせていた。

 天袋から枝美子が本を出し終わって、椅子から降りるときに見えたお尻は、ほとんど裸だったがパンティーまでは見えなかった。

 今し方玄関で覗いたスカートの中も、かなり奥まで見えたはずなのにやはり本来あるはずの布地までは確認できなかった。

 彼女は、いったいどんなパンティーを穿いているのだろうか。また、母乳を搾る時の女性は、恥かしさなどは薄れてしまうのだろうか。

 結局、健二には結論が出せるわけではなく、明日のチャンスに期待をつなぐしか無かった。

 一方、枝美子は少々自己嫌悪に陥っていた。

 「あなたって、いやらしい女ね。高校生を誘惑するなんて」と自分で自分を問い詰めてみたりもした。

 しかし、ベッドに入って目をつむると、右手が自然に股間へ伸びてくる。

 久しぶりに自分の身体をいさめていた。

 しかも、妄想の中に出てくる男は、亡き夫ではなく、健二であった。

 何度か健二の妄想を打ち消そうとしたが、結局はそのまま夢の世界に沈んでいった。



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