真昼の情事/官能小説


  食物循環

                        蛭野譲二

   11.スカートの中


  
 午後一番は、天袋にしまい込んでいた本類を引き摺り出すことにした。

 「この椅子に載って中の物を取り出して」と言いかけて、枝美子は慌ててその言葉を取り消した。

 そこには、一郎に撮られた枝美子の恥かしい写真も仕舞われていることを思い出したからである。

 「あ、御免なさい。まだ要るものもあるから、私が出すわ。健二くんは下で受け取ってね」。

 枝美子は椅子の上に注意深く立ち上がった。その日はミニスカートを穿いていることもあってフレアの裾の辺りが少々気になったが、今更着替えるわけにもゆかない。

 幸い、健二もスカートの中を盗み見るようなこともなく、素直に古本を受け取っていた。

 取りだしを終えた枝美子は椅子から降りようとしたとき、うっかりスカートの裾を椅子の背もたれに引っ掛けてしまった。

 「キャ」と言う声に健二は反射的に枝美子の方を見上げた。

 「見えちゃったかしら」。

 照れ笑いしながら枝美子が言うと健二がすぐに言葉を返してきた。

 「何も見えませんでしたよ」。

 枝美子は、ほっと胸をなでおろした。彼女は、このときスカートの下に何も穿いていなかったのである。

 枝美子は、夫の死後も特に生活パターンを変えたわけではなく、結婚当初と同様に一切パンティーを穿かない生活を続けていたのである。

 照れを隠すように「次は洋服ね」と言って、枝美子は椅子を食卓に戻しに行った。

 しかし、健二の言葉には、嘘があった。

 見なかったのは、パンティーだけでお尻の割れ目まで見えていたのである。

 ただ、枝美子がノーパンでいることまでは理解できずにいたのであった。

 健二が寝室に入ると、枝美子が洋服箪笥を開け、背広などのポケットの中をチェックしているところだった。

 「男物の洋服は皆この袋に入れてしまっていいわ」。

 「これ全部捨てちゃうの。何かもったいないですね」。

 「何処かで整理を付けないといけないから。もしも、気に入った服があれば持って帰ってもかまわないわよ」。

 枝美子の言葉を受けて健二が手に取ったのは焦げ茶のレザーのブルゾンだった。

 「じゃあ、これ貰っていい?」。

 「高校生には、ちょっと早いような気もするけど、叔父さんの形見と言うことで、大事に着てね」。

 枝美子の言葉に、健二は満面の笑顔を浮かべ「やったー」と喜んだ。

 健二が要らない洋服を袋に入れ始めると、枝美子が押し入れを開けた。

「ここにも、あったんだわ」。

 そこには衣裳ケースが何段かに積み重ねられていた。

 下の段にあるケースを引き出そうと、枝美子が腰を落とし前屈みになる。

 健二は、その姿をしゃがみ込んだ目線で見ていた。

 スカートの裾が揚がり、枝美子の太腿の付け根までが視界に入ってくる。健二の手は止まり、生唾を飲み込んだ。

 それに気付いた枝美子は一瞬はっとしたが、頭の中で「偶然だから仕方ないわ」と自分に言い聞かせていた。

 枝美子自身、今日の自分の行動の中に不自然な行為が多いことを薄々感じ始めていたのである。

 今も衣裳ケースの手前側の取っ手を引っ張れば済むのに、何故か腕を奥の方まで伸ばしていたのである。

 「他にも気に入ったものがあるかもしれないから、じっくり片付けてくれればいいわ」。

 一通り処分する服類を引出し終わると、そう言って枝美子は足早にダイニングルームに戻って行った。

 この時、枝美子の乳房はパンパンに張り、ミルクが滲み出し始めていたのである。

 ダイニングルームの扉を締めると、何時もの搾乳機を取り出し、急いで吸引口を右の乳首にあてがった。

 左の乳首を引出してみると、こちらからもミルクが滲み出ていた。

 ティッシュペーパーをあてがっていた左の乳首に搾乳機をあてがうと、やっとほっとすることができた。

 「今日は、何故かミルクが良く出るわ」などと思いを巡らせていると、背後に人の気配を感じた。

 枝美子は、そっと乳房をブラジャーの中に収めると、急に後を振り向いた。

 そこには健二が立っていた。

 「覗いたわね!」。

 少し大げさに枝美子が声を出すと、健二は枝美子のはだけたままのブラウスの胸元と顔を交互に見ながら、目をパチクリさせていた。相当にうろたえた様子である。

 「罰よ。これ飲んで」。

 枝美子が搾り立てのミルクを瓶ごと突き出す。

 健二は慌てて平謝りである。

 「御免なさい。でも見てませんよ。信じてください」。

 その様子を見た枝美子は笑顔を浮かべた。

 「冗談よ。信じてあげる」。

 それでも健二は恐縮した様子で、頭をペコペコと下げていた。

 一応頭を下げ終わると健二は、枝美子の目を見据えて覚悟したように言った。

 「僕、罰を受けます。それ飲ましてください」。

 今度は枝美子の方が意外な顔をする。

 「いいのよ無理しなくても」。

 「いえ、けじめですから」。

 そう言うとミルクの入った瓶を枝美子から取り上げ、ゴクゴクと飲み始めた。

 これには枝美子も少々驚かされたが、一頻り飲み終えた健二が「とても美味しいです」と言ったときには、吹き出すように笑ってしまった。

 実際には味などほとんどしなかったと思うが、健二の素直で少々頑固な態度を観て、枝美子も健二がとても気に入ってしまった。



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