真昼の情事/官能小説


  重役秘書

                        蛭野譲二

   2.初めての酒席


  
 その翌日、田崎から義雄に誘いがあった。

 「来週からアメリカなので、今のうちに美味しい和食を食べておきたいんですって。なかなか課長とはお酒を飲む機会が無かったですけれど、今日は私もお付き合いさせてもらいますので、是非いらしてください」。

 そう告げに来たのは、小夜子だった。

 言葉の上では、出席を強く促していたのだが、彼女の表情は、今一つ浮かない感じである。しかも、この日の小夜子は、推進室に来たときも上着を着たままで、何時も義雄が楽しみにしている、下着の透けるブラウス姿を拝むこともできなかった。

 「わたしは、まだ仕事が残っていますので、専務と先に行っていてください。そんなに遅くならずに参りますので」。

 それだけ言うと、小夜子は部屋を出て行った。


 夕方、田崎と入った小料理屋は小ぎれいで落ち着いた感じの店だった。行きつけの店らしく、田崎の顔を見ると女将は直ぐに奥の小部屋に二人を案内した。

 部屋は茶室ほどの狭い畳の間だった。

 ビールで喉を潤すと、義雄の方から切り出した。

 「今日はどういう風の吹き回しですか?。彼女も誘うなんて珍しいじゃないですか。彼女の方は、なんだか今一乗り気がしないみたいですけど」。

 「この間言ったろ。少し変わってるって。内心嬉しいときに限って何時もあんな態度をとるんだよ。まっ、彼女が来たら、俺に任せておけよ。下手な気遣いは無用だからな」。

 小夜子との酒の席は慣れているのか、やけに自信ありげな田崎だった。

 三十分ほど遅れて、小夜子が部屋に入ってきた。襖を閉めると膝をそろえて馬鹿丁寧に挨拶をする。

 「外から来たばっかりじゃ暑いだろ。上着でも脱いでくつろぎなさい」。

 小夜子は、田崎の言葉を聞くと、瞬間顔がこわばり、いかにも困ったような表情をした。

 「まあ、まずは一杯いきましょう」。

 義雄が小夜子にグラスを差し出すと、田崎がギロッと義雄を見る。

 「そうだな、ともかく乾杯だ」。

 三人は様子を探るように当たり障りのない話をしていたが、暫くすると田崎が先ほどの話を蒸し返した。

 「この間の役員室も暑苦しかったが、ここもあまり涼しくねえな。小夜子君も暑がりの割に無理してるんじゃないか?。上着を取って、脚でも崩しなさい」。

 今度は、義雄が口を挟むわけにも行かない。暫し静観していた。

 「そうですね。じゃあ失礼させてもらいます」。

 一拍の沈黙を置いて小夜子が返事をする。そして、膝をついて上体を真っ直ぐにすると、ジャケットのボタンに手をかけた。

 肩からジャケットをはずした小夜子を見て、義雄は目を奪われた。彼女が上着の下に着ていたのは、僅かにクリーム色がかったシースルーのブラウスだったのである。

 普通ならタンクトップの上に羽織るような軽い感じのもので、生地を通して下に着けているブラジャーのレース模様までがほぼ完全に透けて見えていた。

 「どうだ。香取君は、けっこう大胆だろ」。

 「はあ」。

 義雄は、頬をピンクに染めた小夜子の身体をぼーっと眺めていた。

 「課長、お注ぎいたします」。

 恥ずかしさをはぐらかすように小夜子が冷酒の瓶を差し出す。

 斜向かいに座っていた義雄の位置は少し遠く、小夜子が上体を前のめりにする。結果として、両腕に挟まれた彼女の胸はブラウスを引き裂かんばかりに盛り上がっていた。

 一旦、シースルーのブラウスを披露させると、田崎もそれ以上攻めることはなくなり、多少彼女の身体のことを織り交ぜながらも、思いの外和やかな酒席が続いていた。

 義雄は、相変わらず小夜子の胸の辺りをちらちら盗み見ていた。

 実は少々気になることがあったのである。彼女は初めからブラウスの第一ボタンを外していたが、その下のボタンも外れかかっていたのである。半分ボタン穴に隠れた第二ボタンは引っ張られて縦向きになっていた。

 新しい冷酒のボトルを開けようと、小夜子がキャップに力を入れた途端の出来事である。ついに巨大な乳房の圧力に抗しきれなくなったボタンがはずれ、ブラウスの前が広がってしまったのである。しかも、外れたのは第二ボタンだけでなく、その下のボタンまでが弾け飛んでしまっていたのである。

 「いやん」。

 可愛らしい悲鳴を上げた小夜子は、反射的に両腕で胸をガードしようとした。しかし、そのお陰で瓶に入った酒を撒き散らすこととなってしまった。

 「おい、酒が零れたぞ」。

 田崎の声に彼女は慌てて、外れたボタンをそのままに、おしぼりで零れた酒を拭き取り始めた。

 その間義雄は、はだけたブラウスの間に覗くブラジャーを、暫く眺めることができたのである。

 「小夜子のオッパイは馬鹿でかいから仕方ないな」。

 酔いが回ったのか、妙に砕けた言葉遣いになった田崎も上機嫌である。

 それから小一時間その場で飲み続けていたが、この間の小夜子の対応も奇妙であった。ブラウスのボタンは、弾け飛んでしまったもの以外は、留め戻していたが、その後も上着を羽織らずに居たのである。

 第三ボタンの位置は、なおもブラウスの胸元が開いたままで、深い胸の谷間をちらつかせ続けていたのである。

 「じゃあ、俺は小夜子をタクシーで送ってから帰るからな」。

 店を出た後、上機嫌の田崎がそのまま帰るとも思えなかった。あえて言いはしなかったが小夜子と関係があることは間違いない。その意味で少々面白くなかった。

 しかし、それ以上に小夜子の胸元の印象が鮮烈に残っていた。義雄は、悶々とした気持ちをそのままに帰るわけにも行かず、行きつけの店で飲み直しをしたのだった。



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