真昼の情事/官能小説

  賄い付き下宿

                        蛭野譲二

   42.日記


  
 あの日以降、綾さんとのエッチの際は、必ずコンドームを使用するようになった。だいたい週に一度くらいの「手ほどき」だった。

 その間、麻美との仲も続き、師走を迎える前には、彼女とも体の関係を持つようになっていた。

 綾さんとするのは、平日の夜だけだったから、麻美とエッチするのは、決まって週末だった。俺に彼女ができたことを知られてからは、綾さんと休日にすることもなくなっていた。

 多少の条件は付いたとは言え、暫くは、超巨乳の熟れ切った身体と、若い張りつめた身体を同時期に味わえたことになる。

 心情的には後ろめたさもあったが、やりたい盛りの欲望には勝てず、この状況をできるだけ維持するように、多少の画策はしていたんだ。

 それでもついにバレる時がやってきたんだ。


 年の瀬のある日の晩、綾さんの「手ほどき」が終わった直後だった。

 エッチは、お互いにけっこう盛り上がって、いい具合にことが済んだ後のことだ。

 俺は、のろのろと起き上がって、後始末をしていたんだ。

 ゴムを付けるようになってからは、そのまま寝入ってしまうわけにも行かず、きちんとティッシュで拭うようになっていた。

 そのとき、まだうつ伏せで横になっていた綾さんが、切り出してきたんだ。

 「駿くん、とても良かったわ。もう私が教えることなんて無くなっちゃったみたい」。

 「えっ?」。

 「私も駿くんとは、すごく相性もいいみたいだけど、このままズルズル行くのはちょっと怖いんだ。だから、そろそろお仕舞いにしない?」。

 「だけど…」。

 「もう、彼女とは無事に済ませてるでしょ?」。

 「……」。

 「ここのところ週末は続けて外泊してるでしょ?いくらなんでも、それくらいは分かるわ」。

 実際、外泊をした日は確実に麻美とエッチをしていた。言い逃れができるような状況じゃなかった。

 「決して駿くんが嫌いになったわけじゃないの。ただ、私の立場は、里親みたいなもので例え『愛』は有っても決して『恋』の対象にはならないってこと。それに女としての義理を欠くほどの勇気もないの。ねっ、解ってくれるでしょ?」。

 結局、その晩を最後に綾さんとの夜の関係は途絶えてしまったんだ。


 セックスレスになってからも、綾さんは不思議なくらい自然に優しく接してくれていた。

 母乳の関係も一応は続いていた。

 朝食の飲み物も相変わらず搾りたての母乳だったし、夕食の後も頻度は減ったが、残乳が多いときなどは、綾さんのオッパイに直接口を着けて吸い出してあげたりしていた。

 ただ気丈な彼女は、母乳を吸ってるときなどに俺がスカートの中に手を伸ばそうとすると、その手を無言で払い除けるようになっていた。

 何度かの試みで、その手を封じられてからは、俺もあえて悪戯をしなくなっていたんだ。

 一方で、その頃の俺自身は、下半身の関係が無くなったからといって、ひどく落ち込んだわけでもない。

 まだ綾さんのときほどストレートに欲望をぶつけることはできなかったが、それなりに主導権を持てる若い子にのめり込んでいたんだ。

 むしろ、気楽にデートできるし、エッチをさせてくれる麻美との関係がより濃くなっていたと言うところだろうか。

 後ろめたさがなくなって、麻美と気兼ねなく付き合えたのも確かだった。


 学年末試験を終え、俺は引越しをすることになった。

 別に気まずさも無かったので、あの下宿に居続けようかとも一旦は考えた。しかし、彼女を自分の部屋に呼べないのは、ちょっとハンディだった。

 綾さんも、俺を無理に引きとめようとはしなかった。

 「わざわざ早起きして学校に通うことはないと思うわ。それに駿くんは今度三年生でしょ。成人なったら自炊くらいできないと、いけないわ」。

 彼女の居る俺には、本音はともかく、むしろ巣立ちを促していたんだ。

 まあ、俺が居続けてたら、他の学生を入れにくい。四部屋ある内の一部屋だけの稼働が二年も続いていたわけだから、その分収入も揚がらなかったはずだ。変にしがみ付くのは、迷惑にもなりかねない。

 綾さんとのセックスが既に遠退いていたせいか、とっぷり浸かっている時期には、考えられないくらい俺もクールだったんだと思う。


 引越し先のアパートが決まると、荷物の整理を始めた。

 整理といっても仕事の大半は、捨てることだ。

 引越し先には彼女も来ることが予想されたので、溜まっていたエロ本やエロビデオは全て捨てることにした。

 ゴミに出すとき、小っ恥ずかしいんで捨てずにいたんだが、このときばかりはそういうわけにも行かない。

 なるべくエロい表紙なんかが分からないように束ねる。ただ、背表紙にも過激な表題が付いてる厚手の雑誌は始末が悪かった。

 特に巨乳系の雑誌は、それを綾さんに悟られないようにするのに苦労した。

 「爆乳娘大集合」とか「お姉さんのオッパイ大特集」なんてのは確実に隠すようにしたんだ。

 わざわざ「資源ゴミの日」を確認して、集積所になってる道端に束の向きまで気を遣って置いたりした。

 そんなこんなで、引越し準備に何日もかけてしまった。まあ、お陰で引越しの前日は、かなり早めに準備が整ったんだが。

 その引越しの前は、俺にとって忘れられない日になったんだ。


 最初の切っ掛けは、下宿の階段だった。

 俺が引越しの荷造りなんかの準備をしやすくするため、綾さんが空いている部屋の鍵を開けてくれようとしたときだったと思う。

 綾さんが先に立って階段を上がり、俺が後を追うような格好になっていた。

 もうこの頃は、俺を誘うようなむちゃくちゃ短いスカートを穿かなくなっていたが、それでもスカートはミニ丈だった。

 綾さんが何かを思い出したように振り返えろうとしたとき、身体の捻りの具合で、スカートが少しずり上がったんだ。

 階段下から見上げてる位置関係もあって、けっこう際どいところまで太股が露出した。

 とびっきりのミニじゃないから、肝心な部分までは見えなかったんだが、そのとき俺は思ったんだ。

 「この寒い時期もやっぱりノーパンなのかな?」って。

 年末以降は、たまにオッパイを拝ましてもらうだけだったし、下半身の関係は、麻美とだけだったから、あまりそんなことを考えたりもしてなかったんだ。

 それからは、そのことがちょっと気になっていた。

 午後の早い時間に荷造りは全て終わていたため、俺はあまりやることもなかった。

 綾さんは、「最後のディナーだから」といって、腕を振るってくれることになっていた。

 そのお返しでもないが、綾さんのパソコンをメンテナンスすることにしたんだ。

 俺は一階の居間で、パソコンのソフトをアップデートしたり、ウィルス対策を最新のものに仕替えたりしていた。

 全くの素人が弄ってるパソコンだけあって、ごみファイルもたくさん溜まっていた。

 それらをクリーンアップしようとしたとき、気になるファイル名を見つけたんだ。

 「$diary*.**」。確かそんな名前のファイルだった。

 そのファイル自体は、開いても意味のある文字は出てこなかった。だが察しはついた。

 パソコンの中を探ってみると「ふふふ」というフォルダーが在った。

 山勘は、大当たり。そこには綾さんの「日記帳」みたいなファイルが収められていた。

 俺は、キッチンで料理を造っている綾さんの様子を伺った。

 相変わらずそそる後姿だった。

 ヒップの辺りを少し凝視してみたが、スカートの上にエプロンをつけていることもあって、下を穿いているかどうかは、判らなかった。

 こちらを全く気にしてない様子だったので、いよいよ禁断のファイルを開いてみることにした。

 ファイルは、過去一年くらいの日記だったが、必ず毎日書いているというものではなかった。

 また、大半の日は、一行か二行の短文で、簡単に出来事や思いをメモした程度のものだった。

 全体を流して見ていてあることに気がついた。

 日によって、書き出しの行頭に「*」マークがついてることだ。中には文章が無く、アスタリスクだけが印された日もあった。

 俺はその意味を確かめるために、二人でプールに行った日を見てみた。

 「9月4日:***Sくんとプールに行った。本当に恥ずかしかったけど、楽しかった。いっぱい濡れちゃった(*^^*)」。

 その他の日もざっと見たが土曜日には一つも「*印」が無かった。

 もう間違えようがなかった。俺とエッチした印だ。

 ついでに、至近の日々を見たが、やはりアスタリスクは無い。

 ちょっと面白かったのは十一月頃だ。この頃は「(*)」というマークをつけていた。

 もう一度、料理中の綾さんの様子を確認してから、さらに日記を読み進めてみた。

 「11月30日:(*)Sくんと彼女のこと、気づいていない振りするのなんて、もう無理。本当に、ズルしてまで続けたいのは自分の方でしょ。でもダメ。今度が最後にするのよ」。

 「12月8日:(*)とうとうSくんに言った。終わっちゃった。最後くらい()着けずにしたかったけど、でも終わりよ」。

 「12月10日:Sくんにお乳を吸ってもらった。男と女の関係とは違うはずなのに下が熱くなってた」。

 今まで全く気づかなかった綾さんの秘密が一枚一枚服を脱ぐように明らかになり、二股かけて、いい気になってた自分が恥ずかしくなった。

 もうこの先は読んじゃいけないと思ったが、やっぱり日記から目を離すことはできなかった。

 「12月13日:1週間も経ってないのに、我慢しなさい。この淫乱女」。

 「12月20日:とうとう機械を買った。一番小さいの。クリスマスの前だったからうまく買えたけど、ドキドキだった」。

 「12月25日:イブの恋人たちは何してたのかしら。一人ぼっちの私は、指とカエルと機械だけ」。

 読み進むにしたがって綾さんの葛藤が手に取るように解っていった。

 「1月3日:一人だけのお正月。久しぶりにのんびりとした。でも何か物足りない。今年も心の穴を機械で埋めるのかしら」。

 「2月5日:新学期に新しい学生さんに来てもらうのはどうかしら。きっと純情よ。お料理に腕を振るうわ。やっぱり食の細い子は駄目ね。きっと段々仲良くなるわ。それで、親しくなったら、ミニスカート穿いて中を見せつけるの?偶然ボタンが跳んで、おっぱい見られるの?最後は男の子を四人並べて・・・?ふっ、バカみたい。本当に悪女になれるの?」。

 そこまで読んだところで綾さんが近づいてきた。

 俺は、慌ててファイルを閉じた。

 「パソコン、どうだった?」。

 俺の横から、前屈みになってディスプレイを覗き込む。

 「えっ、えー、ウィルスには感染してませんでしたよ。その他もチューンアップしたし、パソコン内の大掃除は、バッチリですよ」。

 「ありがとう。結局、最後の最後まで駿くんには、お世話になりっぱなしね」。

 日記の中のような苦悩は全く感じさせず、相変わらずの笑顔で応えてくれていた。

 俺はというと、綾さんの大きく張り出した襟ぐりから覗く、深い胸の谷間を盗み見ていた。



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