真昼の情事/官能小説

  賄い付き下宿

                        蛭野譲二

   20.ビーナスの丘


  
 暫く綾さんと肩を寄り添わせた後、俺は行動を開始した。

 「こんな風に綾さんのすぐ横に居ると、なんか男として催してきちゃうますよ」。

 「えっ」。

 もうすっかり落ち着きを取り戻していた綾さんが、顔を向ける。

 「もう、あれから一週間以上経ってるでしょ」。

 この言葉で、綾さんは全てを察したようだ。だが、まだ簡単に身体を開いてくれる感じでもなかった。

 「そうね、駿くんに頼ってばかりだもんね。何時かみたいにオッパイでしてあげようか」。

 エッチを何とか「お手伝い」で済まそうとしているようだった。だが俺としては、それだけじゃ物足りなかった。

 「それもいいですけど、オッパイは今さっき十分飲ましてもらったばっかりだしー。そのー」。

 「あっ、この前は安全な日だったの。でも今日は、終わった後だからー」。

 このころの俺は、生理の周期なんかの知識は全然無かったが、女性が身を守るために、こんなに冷静に計算しているとは思わなかった。

 だが、俺もここで引き下がる気もなかった。

 「終わってるなら、いいじゃないですか」。

 「でもー」。

 抵抗というか、まだ迷いがあるようだったんで、少し方向を変えて攻めることにした。

 「じゃあ、見せてくださいよ。素敵な綾さんのカラダ、拝ましてください」。

 「オッパイなら毎日見てるでしょ」。

 「はぐらかさないでくださいよ。この間だって、スカート着けたままだったでしょ」。

 「えっ、それはー」。

 スカートのことに触れると、綾さんは急にうろたえ始めた。今日もノーパンでいるのは間違いないと思った。

 俺は、それを確かめたくってしょうがなかった。

 「僕、この前も言ったけど、女の子とは経験少ないから、女性の身体、良く知らないんですよ。だから、教えると思って、ね、お願いします」。

 深く頭を下げ、拝み倒すようにしていた。

 「本当に見せるだけでいいのね」。

 ついに綾さんが折れた。

 「はい、もちろんです」。

 「じゃあ、約束して。スカートの中のことは絶対に誰にも言わないって」。

 やけに慎重な態度だったが、俺にとっては一も二も無い。

 「やっぱり今日も、下、穿いてないんですか?」。

 綾さんの頬が、ぱっと染まり、僅かに微笑んだように見えた。

 「見れば判るんだから野暮なことは訊かないの。その代わり絶対に笑わないでね」。

 しつこく念押しする綾さんに、俺は頷いてばかりだった。

 やっとソファーを立ち上がり、座ったままの俺に向き合った。

 まずは、ブラウスのボタンに手をかける。

 上半身は、さして躊躇する風もなく、あっさりとブラウスを脱ぎ捨てた。

 だが、このときは、ブラジャーに手を触れることも無く、ダランと手を下ろした状態で佇んでいた。

 上半身にブラジャーだけを着け、下半身は、この頃もう定番になっていたミニスカートだけを穿いていたわけだ。この挑発的な姿を眺めるだけで俺の股間は元気になり始めていた。

 次は当然スカートのホックに手を掛けると思っていた。

 しかし綾さんは、軽く深呼吸をするようにした後、ほんの少し前屈みになって、スカートの裾を両手で摘んだんだ。

 そのスカートの裾がゆっくりと揚がり始めた。

 見えてきた太股の上の方は、すべすべで抜けるように白い。良く見ると網の目のように静脈が浮き出てる。

 適度な量感のある長い脚は、もうほとんど全て俺の目の前に晒されていた。

 それはあまりに魅力的で、太股に頬擦りしたいほどだった。

 裾はさらに引き上げられ、ついに太股の延長ではない部分が見え始めた。男と女では、造りの全く違うあの部分だ。

 やっぱりミニスカートの下には何も穿いていなかった。俺との日常会話や食事をしているときも、スカートの中はずっとノーパンだったんだ。

 綾さんの動きが、そこで止まっていた。

 俺が頷くように頭を振ると、頬を真っ赤に染めながらも、さらにスカートをたくしあげてくれた。

 綾さんのアソコは、縦の割れ目の下から、丸まったというか縮れたような肉片がほんの少しはみ出していた。ちょうどモツ肉のような感じだった。

 逆に筋目の上の方は、丘に向かう縦筋が二本に分かれ、間の肉は丸っこい傘のように、敏感な部分を覆い隠していた。

 俺は身を乗り出すようにして見入っていたと思う。

 だが、そこで綾さんは手を下ろし、大事な部分はスカートに再び隠されてしまった。

 「ずるいですよー」。

 俺の言葉に促されて、綾さんは、またスカートをたくし上げる。

 もう一度、綾さんの女の部分が現れた。

 手の動きは、また躊躇を見せたが、今度はさらに上まで揚がって行った。

 亀裂の上の丘は、少しふっくらした感じで、なんとも柔らかそうだった。

 お臍の辺りまでスカートが揚げられた状態で、綾さんは動きを止めた。

 下腹には、ほんのり薄く縦線があった。

 「これが妊娠線ってヤツかな?」なんて思ったが、特に美しさの障害になるほどでも無く、違和感は無かった。

 それより俺は、綾さんの身体の決定的な特徴に気付き、視線はその辺りを探るように泳いでいた。

 綾さんのビーナスの丘は、あくまでスベスベで滑らかな曲面を余すところ無く晒して居たんだ。

 そう、陰毛は唯の一本も生えていなかったんだ。

 良く目を凝らしてみても、短い毛すらない。剃ったりしてるのではないことは顕かだった。

 幸い綾さんは、ギュッと目を閉じていたし、俺もヘマな声を出さないで済んだ。

 ただ、俺はポカンと口をあけて、想像だにしなかった少女のような恥丘を眺めていた。

 「もう、いいでしょ?」。

 俺の返事を待たずにスカートは下ろされ、綾さんは俺の顔を見つめていた。

 俺が見上げて何か言おうとしたとき、綾さんは、それを遮って喋り始めた。

 「こっちに戻ってから、誰にも知られたくなかったことが三つあったの。もう駿くんには全然意味無いけど、まだ、お乳が出続けてることも他の人には秘密にしてるんだ」。

 綾さんは、一瞬俺に念を押すように目を向けた。

 「二つ目は、この間バレちゃったわよね。下、穿いてないこと…。あれから穿くようにしようかと思ったんだけど、やっぱり長いこと着けてるのってダメみたい。もう何年も穿かずに暮らしてたからかしら。あの開放感に慣れちゃってるから、一日中ってのは鬱陶しかったの。硬い椅子に座ってるとラインが当たって痛いし」。

 俺は黙って聞き入っていた。

 「実はね、学生さんが駿くんだけになってからは、全然穿いてなかったんだ。この間は、出掛けるときだけは…、みたいなこと言ったけど、この夏は一度も穿いたこと無かったの。オッパイ吸ってくれてるときも駿くんは変なことしないから、安心してたのかもしれないわ」。

 呼吸を整えるみたいに綾さんは、ほんの少し声を途切れさせた。

 「それで今日は、とうとう一番知られたくなかったことも、知られちゃったってことね。恥ずかしいから秘密は絶対守ってね」。

 俺は何回も頷いていた。だが、この日をこれで終わらすつもりもなかった。



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