真昼の情事/官能小説


  循環病棟

                        蛭野譲二

   2.検査病棟


  
 聖垂会病院は、温暖な地方の街からかなり離れた所に、広大な敷地を抱えて存在していた。

 タクシーで病院に向かった竜一は、病院の門の前で車を降りた。

 警戒は厳重で、タクシーすら院内に入ることは許されないのである。

 まだ病院の建物も見えない寂しい守衛所の所から病院の玄関まで五分ほど歩かされた。

 建屋は何の変哲も無い三階建てのビルだった。ただ、周りは小奇麗に整理され、花壇などもあり、一応清潔な感じではあった。

 玄関を入ると、そこは病院というより、少しクラシックなリゾートホテルのフロントといった風である。

 カウンター内に一人若い女性が居る他は、人気が無かった。

 竜一の顔を見るなり彼女は「西岡様ですね、お待ちしておりました」と丁寧に頭を下げた。

 さすがに、受け付け嬢は美人で、教育は行き届いているようだ。

 竜一は、何が出てくるかわからない不安感から開放されたと同時に「侮れないな」と思った。

 事前に提出しておいた写真が既に院内に配布されている違いない。

 彼女は、カウンターを回り込むようにフロアに出てくる。胸には「奥村めぐみ」と書かれた名札を付けていた。かなり豊かなバストである。

 服装は、白のブラウスに、黒のストレートスカートを着ていた。スカートは膝上十五センチくらいで、後には十センチくらいのスリットが入っている。

 奥のソファーに案内されながら、竜一はチェックを怠らない。

 ソファーに座って暫く待たされると、めぐみがコーヒーをもって来た。竜一の斜め前に立ち止まると、深く腰を下げコーヒーカップを差し出した。

 すかさず竜一は、彼女の身体を盗み見た。

 何故かブラウスの第二ボタンまでがはずれていて、隙間から胸の谷間が一瞬見えた。

 視線を下げると、スカートの中がかなり奥まで見える。

 彼女は黒のストッキングを穿いていたが、それはパンストではなくセレパートタイプで、ストッキングの上の部分がレース状になっているものだ。その奥の素肌の太腿までがチラリと見えた。

 コーヒーには、既にミルクが入れられていたが、普通のクリームではなく、牛乳のように薄い感じだった。しかも、砂糖などは添えられていない。

 「あの、お砂糖は?」。

 それを見て竜一が声をかける。

 「ここは、成人病の病院ですから慣れてくださいね、コーヒーもこれが最後で退院まで飲めませんから」。

 そう言ってカウンターに戻っためぐみは、何かコピーしてある紙を持って戻ってきた。

 「暫くすると、検査病棟の看護婦が来ますから、それまでにこちらに目を通しておいてください」。

 めぐみがカウンターの方に戻るのを見送って渡された紙に目をやる。

 紙は二枚で、一枚目の紙には「暫定入院者スケジュール」とある。内容はごく簡単なもので、今日明日の予定のみが書かれていた。

 二枚目の紙は、入院中の規則が印刷されていた。

 規則の中には、指定されたとき以外は外部との連絡が取れないこと。その時以外に外部から連絡があっても取り次がないこと、本入院となって以降は、私物の病室等への持ち込みが一切認められないこと、などが書かれていた。


 二枚の紙を読み終えると、程なくして一人の看護婦が竜一の前に現れた。看護婦は若く、こちらも相当な美系で、バストも大きかった。

 胸の名札には「北原景子」とある。

 だだ、竜一の期待に反し、彼女はごく普通の白衣を着ていて、靴もハイヒールなどではなく、普通のナースサンダルを履いていた。

 「こちらに、おいでください」。

 景子は、挨拶を済ますと、竜一の荷物を一つ持ち、歩きだした。

 「また検査があるんですか?」。

 並んで無言で歩くのも何なので竜一から話しかけていた。

 「検査病棟での検査は主に入院中のプログラム作りのためと、院内感染対策のためです。明日には結果が出ますから、それで問題無ければ、明日中には普通病棟に移れます。それまでは我慢してくださいね」。

 景子の受け答えは、つっけんどんなものではなかったが、やや事務的であった。

 検査病棟は完全個室でビジネスホテルの客室を殺風景にしたようなものだった。

 「これに着替えてお待ちください。すぐに検査室にお呼びしますから」。

 景子は、ブルーのトレーナーを渡すと部屋を出て行った。


 午前中の検査は、健康診断の様なもので、昼食を挟んで午後は体力測定の様なことを行った。

 もちろん、採血もされたが、何故か採尿は三回もあった。

 検査の間、他の患者に会うことはなく、医者と看護婦の景子の二人だけとしか、顔わ合せなかった。

 検査が終わった竜一は病室に戻り、一人今日一日見聞きしたことをチェックしていた。しかし、結局は「病院の内情は、普通病棟に移ってからじっくり調べるしかないな」ということにしか至らなかった。


 午後五時半を回ったくらいに、景子が夕食を運んで来た。

 ワゴンからトレーをサイドテーブルに移している景子の後ろ姿を見て、竜一は「おっ」と思った。

 景子がやや前屈みになって腕を伸ばしていると、白衣が身体に貼り付き、肩から腰までの身体の線がはっきりと見えた。その状態では、下着のラインもかなり透けて見える。

 景子は、白衣の下に直接下着を身に着けていた。背中にブラジャーの形が浮び上がり、腰の所にも横に走る白い線が見える。

 その線は中央部がやや厚い感じで、両サイドから太腿の方に向かう線に分岐している。そのラインは紛れもなくガーターベルトだ。

 杏子と同様に、景子もストッキングをガーターベルトで吊っているのである。

 「どうぞ」と景子に声をかけられ、竜一は我に返った。

 まじまじと身体の線を見ていたことに気付かれたかもしれない。竜一は「ありがとう」と言っただけで、その事には何も触れなかった。


 食事が終わり長い夜が始まった。

 夜型の生活の竜一は、よっぽど真夜中に病院内を探索しようかと思ったが、ここでボロを出しては元も子もない。ここは我慢して明日以降に備えることにした。



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